づどど

色々雑記です。

憧れと香水

Amazonプライムデーですね。

ネットスーパー&生活必需品&治療用のサプリなど買いだめしていたら万を超えました。

とかく生きるのにはお金がかかる。

 

 

プライムデーのキャッチコピーが「憧れのアイテムをいまこそ」なんですが、違和感があって。

 

まず、Amazonで「憧れ」って売ってなくないですか?

食料、生活必需品、本、家電などは買いますが、憧れって?

高級家電やPCは憧れ……かもしれないですが、どちらかというと生活の向上なので、ケに属する気がします。ハレの憧れとは対極です。

Amazonは生活を売っている。

生活を売っている故に離れがたくなっているのですが……憧れではなくないですか??

まあ、憧れを売っているイメージを付けたいというコピーなのだと思いますが。

 

 

そもそも、「憧れのアイテム」って最近ありますか?

憧れって……寝たきりで最近とくに体調が悪い私からすると健康が憧れなのですが、そういうやつじゃなくて。

 

最近はモノ消費からコト消費、体験消費に軸足が移っています。

高いものはシェアする時代。所有に憧れは減ってきています。

 

ですが、考えていくと、ありました。憧れのアイテム。

というか憧れを、最近プレゼントしていただきました。

私の憧れはペンハリガンのジュニパースリングという香水でした。




そもそも、香水については長いスパンの思い入れがありまして、まずストーリーは大学卒業時に友人と百貨店に買いに行ったところから始まります。

 

就活を終え、内定ももらって、友人と私は新社会人になるにあたって浮足立っていました。しかも、ふたりともド文科系のくせに体育会系と聞く大企業に内定をいただいており、怯えてもいました。

 

そこで二人が行きついたのが香水でした。

武装としての香水。

百貨店で、これさえ付けていれば胸を張っていられるような香水を買おう。

そういう武装が私と香水の始まりでした。

 

大きな百貨店で、売り場のお姉さんに丁寧に説明してもらい、大学生にとっては背伸びのする買い物を慎重に検討しました。

雨の日でした。

私は武装のための香水に、湿気の強い日でも香りがこもって頭痛がしないような、武装に反してやわらかい香りを求めていました。

しなやかに厄介ごとをかわす、そういう強さを求めていたように思います。

 

手首に気に入った香水をつけてもらい、一度売り場を離れて1時間ほど雨の街を歩きました。そうして、頭痛もせず、気持ち悪くもならず、ちょっと胸を張れると確信して、再度お姉さんの待つ売り場に戻って、香水を買いました。

 

メゾンフランシスクルジャンのアクアユニヴェルサリスフォルテ。

私が買った初めての香水でした。

 

香水の力もむなしく、大企業での諸々をかわし切れずに人生が大変になるのですがそれは置いておいて……。

 

 

次に私が香水を求めたのは、人生が全ロスした直後でした。

本当に人生が大変になって、家は無かったものの、少しばかりの貯金はあったので、私は誇りを求めました。

私にとっての誇りは、あの日の百貨店の香水売り場にある気がしました。

 

でも、人生を全ロスした直後で、何を買えば自分の心に一本芯を通せるのか分かりません。あの日の銘柄も覚えていませんでしたし、あの日の銘柄と同じものを買う必要も無いと思っていました。今日この日、胸を張れる香りがあれば良いと思ったのです。

 

精神に誇りを付与する用途なので、香水は高級である必要がありました。

高級といえば銀座です。

銀座の香水売り場をいくつか回り、あれでもない、これでもないと試しては首をかしげます。

人生を全ロスした直後なので、何かを探しているのですが、何を探しているのかは分からなかったのです。

 

そして、色々と回っている内に、ふと、当たりの香りに辿り着きました。

そう、あの日買った香水の銘柄に辿り着いたのです。

 

あの日の香水に辿り着いた時、私の心には、やっとたどり着いたという気持ちと、あの日に戻るような気持ち、両方がありました。

友人と百貨店で背伸びをした日から、色々ありました。

あの日の香りを再度手にするということは、その後の色々を繰り返すような気もしたのです。

純粋に、胸をそっと張ってくれる香りではもう無くなっています。

色々な人生の波乱を、その香りの意味は含んでしまいました。

この香りを付けると、つらい出来事を沢山思い出してしまう気もしましたし、好きな香りに悲しい意味を付与することもつらかった。

 

しかし、つらさと同時に、友人と一緒に強くあろうと、武装しようとした、背伸びする強さも香水の記憶にはありました。

大学生の私は、つらい記憶を知らないけれど、今の私は知っている。

 

私は悩みました。買うかどうか。

これ以上好きな香りはありません。しかし、香りの意味が変わっている。

 

ふと、その時逆に考えました。

買わないとしたら。

ここで、この香水をつける人生を取り戻さないとしたら。

それは、その瞬間こそ、人生の波乱への敗北を意味する。

大学生の、背伸びしつつ、人生に立ち向かうために武装し、前を向いていた気持ちを、二度と手に入れられないかもしれない。

 

香水を買う、買わないではない。

あの日の誇りを取り戻す、そういうことなのだと、理解したらすんなりと腹落ちして、私はあの日の香水を買いなおしました。

香水を買いなおすこと、即ち清濁併せのんで人生を取り戻すと決めること。

 

 

2種類目の香水は、その時ハマっているキャラのイメージにぴったりの香水があったので買いました。特に人生には絡みません。

J-scentの沈香

J-scentは安くて個性的な香りがあって好きなブランドです。3000円程度で良い香りが手に入るのでオススメです。

ムスクの中にすこし柑橘が混じる、落ち着いた香りです。

寝る前に布団にかけると落ち着きます。

 

 

3種類目の香水は、コロナ禍で、体調も大分悪くなっていた頃でした。

蔦屋書店で並んでいた猫のイラストや猫型の瓶がかわいい香水です。

Comme des Garcons Grace By Grace Coddington、Vogueのエディターを長年つとめたグレースコディトンがプロデュースした香水です。

香りを試させてもらうと、甘いローズの中にきりっとしたスパイスが効いた一筋縄ではいかない匂いがしました。

コロナ禍において、既に病気を発症して弱り始めていた心に、すっと清涼剤のような香りは絶対に必要な香りでした。

香りとは反して、瓶にかかれたおどけた猫のイラストのユーモラスさも気に入っています。

 

 

銀座で、香水を買いなおした際、気に入った香りが2つありました。

ひとつはサンプルでいただいたペンハリガンのジュニパースリング。

もう一つは香りだけ試したメゾンフランシスクルジャンのウード。

 

 

ペンハリガンのジュニパースリングはすっと鼻に抜ける爽やかな香りが気持ちいい香水です。

森林のコテージで真夏に飲むミントたっぷりのモヒートのような、透き通るグリーンの香り。

 

今まではフェミニンな香りばかりでしたが、サンプルでいただいたジュニパースリングの爽やかな香りもお気に入りで、サンプルを少しずつ付けて大事に使っていました。

 

気に入ったものの、ふらっと買える値段ではないのです。

サンプルをいただいた時、私の人生は全ロスしていました。

人生を取り戻し、いえ全ロスする前よりもっと良くして、いつかお給料が上がって余裕が出てきたら買おう、という目標であり、憧れの香りがペンハリガンのジュニパースリングでした。

 

それから人生は順調に進んでいく……訳もなく、数年は順調にキャリアアップしていったものの、コロナ禍にコロナ後遺症に罹って、私は寝たきりになってまた人生の大きな部分を欠けさせる羽目になりました。

 

コロナ後遺症になって、幸いだったのは味覚と嗅覚は異常が無いことです。

たまに香水をワンプッシュするのは数少ない気分転換でした。

 

徐々に減っていくジュニパースリングを、いつか手に入れるのだ、という憧れが、私をベッドに寝たきりの人生から、かろうじて起き上がらせました。

ほぼ寝たきりではあるものの、出来る範囲のことで人生を立て直そう、という微かですが鮮烈な誇りは、缶詰のように香水に詰められていたのです。

 

そうして、どうにか人生を立て直して仕事をしていく内に……

お仕事をご一緒させていただいていたミナヅキじゅんさんから、ジュニパースリングをプレゼントしていただきました。

 

とても高価なものなので恐縮8割でしたが……でも、目から鱗のような喜びがありました。

もちろん単純に欲しいものが手に入ったという喜びもありますが、それとは別に……

ちゃんと人生を立て直し、人の役に立つ仕事ができたことへの勲章のようないただき方だな、と思ったのです。

 

自分でお金を稼いで買うというのはある種マイルストーンであり、アチーブメントです。でも、いただくというのは……認めていただいたという、勲章ですね。

ジュニパースリングは、他の香水のように誇りの詰め合わせではなく、勲章となりました。

 

 

さて、憧れを手にしてしまったので、次の憧れを定めないといけません。

最近どうにも体調が悪いので、前を向く方向が定まっていないとすぐ精神まで沈んでしまいそうなのです。

 

もう一つ、あの日、気に入った香りにメゾンフランシスクルジャンのウードがあります。

ウードはユニセックスですが、セクシーな香りなので私には似合いません。

たとえるなら異国の王子様のような香りなのです。

もし恋人やパートナーと呼べるような人が出来たら、ウードを贈って付けてもらいたい。私好みの王子様の香りをまとってほしい。

そういうわがままに付き合ってもらえるようなパートナーに出会いたい。

 

そして、4万以上する香水をプレゼントできる財力も身につけたい。

その為には稼ぎたいし、ウードの香りがする方の隣にいても見劣りしないよう外見も美しくありたい。

 

次の私の憧れはウードをパートナーに贈ること。

そういう風に決めました。

憧れがあるので、きっと折れずにやっていけます。

 

 

憧れは定めました。欲しいものは口に出すと叶うと言います。

パートナー、家、仕事、随時募集しています。

当方寝たきりながら自立しており、おもしれーやつです。

高級な香水について書いていて金遣いが荒そうですが、実際、覚悟を決めて買ったこの数回しかありません。

おもしれーやつをご用命の方、どうぞお声がけください。