AI楽しいですね。
産業革命の時代に生きている感じがします。
私は技術者ではなく、ビジネス観点から5年ぐらい前からAIを追っています。
あとSFやミステリーが好き。
ここまで爆発的にAIが広がるのを見ているとSFやミステリーの世界観で生きている気分になります。
もっとSF的世界観で生きているのを楽しみたくないですか!?
ということで、AI時代にオススメのSFやミステリーを、いくつか紹介したいと思います。
本自体を読まずとも、AI時代に知っておくと楽しい概念や言葉をざっと理解できるように書いていきます。
なお、作品紹介はAIに関連した部分を抽出して書いているので、内容に完全に沿っている訳ではありません。本来作中で大事な部分を端折ったりもしてます。
また、なるべくネタバレにならないように書いています。
われはロボット
これ、短編集なのでとても読みやすいです。
- 第一条
- ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
- 第二条
- ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
- 第三条
- ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
— 2058年の「ロボット工学ハンドブック」第56版、『われはロボット』より
内容としては、ロボット3原則によってロボットが自家撞着に陥って様々なトラブルが起き、そのトラブルの原因を探るという、ミステリーに近い読み味です。
ロボット3原則のようなロボット倫理、AI倫理について理解したい人はもちろん、謎解きミステリーが好きな人にもオススメです。
現在も、言語生成AIで罵倒が出力できなかったり、画像生成AIでは実在の人物の画像生成を規制したり、AI倫理は今後重要になっていくでしょう。
一九八四年
みんな大好き1984。
「Big Brother is watching you」という有名なフレーズや思考警察という設定に表れるように、全体主義的な監視社会の怖さを扱ったSF……とも読めるのですが、特にChatGPTが跋扈する現代において注目したいのはニュースピークという新言語の方。
ニュースピークでは語彙が制限され、音節も短く、人々が「思考しないようにする」言語になっています。
そもそも、人間というのは言語で思考する。思考には自由な発想の言語が必要であるが……それを制限するのがニュースピークです。
ChatGPTの力を使って部屋を片付ける記事が話題になりましたが……
ChatGPTの力で「片付ける気すら起きないほど荒れた部屋」 が楽に綺麗になった話 | ギズモード・ジャパン
今後、ChatGPTによって我々人類は思考のアウトソーシングを行っていくのだと思います。思考って面倒ですからね。
しかし、思考に使う言語をAIが、あるいはAIを設定する何者かが歪めたとしたら……1984の世界が来ないとも言い切れません。
言語の大切さ、自分で自分の言葉を持っていることの大切さを1984を読んで噛み締めたいところです。
デュラララ!!
「デュラララ!!」がSFかどうかは置いておいて……
「デュラララ!!」のSF的側面に目を向けたいと思います。
「デュラララ!!」の1巻に出てくるインターネットの都市伝説、噂話として存在する「ダラーズ」。
都市伝説でしかなかったダラーズが現実に力を持つ、という、インターネットの情報が実際に力を持って動き出すというのが1巻の主な事件の一つです。
(成田良悟作品は同時多発的に色々な事件が起こります。好き)
いわばインフォメーション・サイエンス・フィクションです。
ダラーズを作ったのは誰か、はネタバレになるので置いておいて……
ダラーズの情報をかき回して事件を大きくしたのは間違いなく情報屋の折原臨也でしょう。
他の巻でも折原臨也は悪意(法律用語)を持って事態を引っ掻き回します。
私はAIの発展を見るたびに、折原臨也のことを思い返しています。
というのも、折原臨也は池袋の情報屋で、情報を発信したり、捏造したり、流布したり、情報を駆使して人々を翻弄する。
その動機は「人間を愛しているから」といった愉快犯です。
漫画「ヘルシング」の少佐が戦争を愛するゆえに戦争をするように、折原臨也は人間を愛するがゆえに人間を翻弄し、奔走するところを見たいのです。
で、なぜAI時代に折原臨也なのかというと、「たとえば折原臨也がChatGPTを手にしたら?」というのは常に念頭に置いておいた方が良い課題だと思うからです。
単独でもある程度情報操作に慣れた人物が、AIアシスタントを手にしたら。
無限に情報を生成できるとしたら。
このフィクションはとても読んでみたいのですが……現実に起きるのは勘弁ですね。でもきっとこの手の悪意ある使用法は起きるでしょう。
そして、その悪意に我々は気付くこともできないでしょう。
国、軍、巨大企業などの脅威と同程度の脅威を一個人が持てるようになる。
その危機感は誰しもが持っているべきだと私は思います。
この辺りの危機感は、自民党のAIプロジェクトの資料の中の、
に詳しいです。ぜひ読んでください。ていうかこのnoteに載ってるpdf資料は、全部読むと良いです。随時更新されているので時々チェックしましょう。
自民党AIの進化と実装に関するプロジェクトチーム|衆議院議員 塩崎彰久(あきひさ)|note
技術者同士のぶつかり合いとしては、天才的ハッカーとエンジェル投資家が手を組む漫画「王様達のヴァイキング」も相当面白いので、ぜひ読んでください。全19巻完結済みです。
虚構推理
妖怪たちの神である主人公と、不死である主人公の恋人が、妖怪と人間の秩序を守るため、トラブル解決に奔走するラブコメミステリー漫画です。小説も出ています。
「スパイラル」の城平京先生原作なので面白いに決まっているので読んでください。
さて。
で、生成AI時代になぜ「虚構推理」なのかというと、主人公の岩永琴子の武器は「虚構」です。
妖怪と人間の秩序を守るため、妖怪たちがしでかしたことにはカバーストーリーが必要。そのカバーストーリーを見事にでっち上げていく手腕が非常に面白いのですが……。
(カバーストーリーについてはSCPを漁ると楽しいかもしれません)
ChatGPTが「もっともらしい嘘」を吐き出し続けている昨今。
「真実」は何で定義されるのでしょう?
ChatGPTの出現によって、私は私の真実が危うくなっていると感じます。
そもそも、私たちの今信じている真実すら、虚構なのかもしれませんね。
虐殺器官
ハーモニー
伊藤計劃の最高傑作です。SF好きの方ならご存じのように、SFは伊藤計劃以前・以降に分かれるともいわれる傑作。
虐殺器官で描かれるのは言葉の力。人間のどこかにある虐殺スイッチを押す虐殺の言語を操って世界各地で戦争や虐殺を引き起こすジョン・ポールという謎の男を追いかける軍人が主人公です。
主人公は虐殺の言語を用いる男を追いかけつつ、死んだ母のまなざしに怯え、死んだ母のライフグラフ(人生の情報・伝記が生成できる)を見ることを恐れています。
ハーモニーでは虐殺器官の後の世界。世界観は繋がっていますが、独立した作品として読めます。というか、両方読むとちょっとお得レベルの繋がり。
人々が体内にWatch meというナノマシンを入れ、健康であるのが義務になったユートピア(ディストピア)の世界が描かれます。
ハーモニーはETML(Emotion-in-Text Markup Language)という特殊な言語で書かれています。
特殊な言語といっても、通常の日本語にHTMLのようなマークアップがついているだけ。怒るシーンでは<anger>セリフ</anger>のように。
HTMLに慣れている人は読みやすいでしょうし、慣れていなくても意味は理解できます。
2作に通じているのは、やはり言葉の重要さ。
特に、人間がログ、言葉に置き換わっていくことへの問題提起が生成AI時代には刺さるのではないでしょうか。
そもそも、生成AIは人間の膨大な言葉の集まりを学習したものです。
画像生成AIはイラストレーターが決定的に嫌悪感を示していますが、言語生成AIは人々は友好的に受け入れているのはなぜなのでしょうか。
人生をログ化して、ログに表しきれない本当の自分はどこにいるんでしょうか。
では、人間と同じようにログを吐き出す言語生成AIが近々できたとして、「本当の自分」を持っているんでしょうか?
そもそも、人間って「本当の自分」を持っているんでしょうか?
この辺りの哲学的問題については、初音ミクの「思慮するゾンビ」を思い出しますね。
曲に使われている用語を深堀するとAI生命系の哲学に詳しくなれると思います。
銀河ヒッチハイクガイド
みんな大好き銀河ヒッチハイクガイド。
「人類、宇宙、すべての答え=42」の元ネタです。
42を知っていても、42を導き出したコンピュータについては良く知らない人が多いんじゃないでしょうか。
銀河ヒッチハイクガイドは、宇宙バイパスの建設に伴って地球が破壊されるシーンから始まります。たまたま宇宙人と友人だった主人公はその友人と一緒に宇宙を旅するのですが……
イギリス人作者のダグラス・アダムスのブラックユーモアに満ちたコメディ展開が非常に楽しいSFです。
さて、ネタバレに触れますし、コンピュータについてはぼかしておくとして……
よく事件現場や災害現場で、自分にも危機が迫っているのに、カメラを回し続けている民衆が揶揄されますよね。
ポケモンのウルトラビーストのCMの映像が非常によくできているので見てほしいんですが。
なぜ、人間は自分の生命の危機よりも、映像記録を優先してしまうんでしょうか。
ジャーナリストならまだ分かりますが、ジャーナリズム魂なんて持ってい無さそうな一般人なのに。
「利己的な遺伝子」が人間にそうさせるんでしょうか?
遺伝子の存続には情報が必要だから?
さて、生成系AIは、人間たちが吐き出したログを食べて学習しています。
人間はログ生成を生存より優先するとしたら……?
もしかして、人間たちは生成系AIに学習させるログを生成するよう遺伝子に設定されているとしたら?
地球人類は、ログを生成するための人口生命だとしたら?
……なんていうSF的妄想も捗ってしまいますよね。
紙の本を読みなよ
「紙の本を読みなよ」はPSYCHO-PASSの槙島聖護のセリフです。PSYCHO-PASSもめちゃくちゃ面白いSFアニメなのでぜひ。
今後、インターネット上の情報は全て生成AIの影響を少なからず受けるでしょう。
もちろん、今後出版されるあらゆる紙の本にも影響するでしょう。
近い将来、信頼できる情報は2022年以前に出版・発行された紙の本だけ、ということにもなりかねませんね。
紙の本を所有しているのは悪いことではないので……今日も本を買って読もう、という散財の言い訳につなげて終わりましょう。
ちなみに、SF好きなのでついディストピア的な言説が多くなりますが、AIによって引き起こされるのはディストピアだけではないでしょう。
結局は使い方次第なんですが……うまく使えると良いですね、人類。
もう引き戻すことは出来ません。
だってパンドラの箱は開いちゃったし、ルビコン川は渡っちゃいましたから。あーあ。